2024/09/27 16:03


皆さまご機嫌よう。
Antiques Amour Violetでございます。

少女たちのフォトアンティークポストカードをご紹介して参りましたが、
今回は1900年代初頭頃のスミレ、パンジー、スズランといったお花モチーフのアンティークポストカードをご紹介いたします。

今回ご紹介いたしますポストカードはイラストレーションのカードではなく、ポストカード本体に当時の匂い立つような布花やシルクリボンが貼られた
非常に繊細な布素材やエンボス加工にスプレーが施されたポストカードです。

今日私たちが想像するポストカードはいわゆる”絵葉書”と表現される印刷物を多くの方が想像されるところであると存じます。
1900年代初頭――20世紀の初めに西欧を中心に郵便制度が整ったことや写真の実用化、印刷技術の向上も相まって一大ポストカードブームが巻き起こりました。

美しい女性や愛らしい少女、無垢な子どもたちの写真、天使や動物、人物など豊かな想像力で描かれたイラストレーションのカード、
観光名所や名画の写真、エロティックなヌード写真などポストカードのテーマは人々の需要に応え実に様々なものに及びましたが、
こうしたポストカードブームの中で布花やシルクリボンをカードに貼ったり、繊細な刺繍が施されたり、エンボスで花々が表現されたり、
セルロイドに手描きで美しいペイントが施されたりと印刷とは方向性の異なるより工夫を凝らした美しい手工芸ポストカードも登場していきます。



その一例がこうしたハンドメイドの香り漂うポストカードです。

当時の人々がいかにポストカードを送り合う文化に熱狂し、より美しく工夫の凝らされたカードを
友人・知人に送ることを楽しみとしていたかが伝わります。

現代のグリーティングカードは開けば音楽が鳴ったり、光が点滅したりと1900年代初頭のポストカード文化の頃からは
信じがたいような演出が出来るようになりました。

しかし、どれも素晴らしい現代技術の賜物ではあるものの、どこか空虚な量産品でしかないとも感じるのもまた事実です。


1900年代初頭頃のポストカードに貼り付けられた布花やシルクリボンは120年以上の時を経て今や退色し、シミなども多数表出しています。

人と人との繋がりが濃密で、誰かの手元に美しいカード一枚を送りたい…という心の余裕、
人間本来の思いやりと美しいものへの純真な喜びがあったかつての時代を偲べます。
120年もの時を経てやや色あせたスミレ色のシルクリボンが儚くも、在りし日の美しき時代を示すように確かな存在感を放っています。

クロモリトグラフ(石版印刷)のポストカードとはまた異なる人間が純粋な美と喜びを交換し合っていた豊かな時代の残像として
是非お手元で在りし時代の時の香りをお楽しみくださいませ。

秋の夜長、一枚の美しいポストカードに心を込めた古(いにしえ)の人々の美意識に想いを馳せながら
大切な方にお手紙を認めてみるのも心豊かな過ごし方の一つかもしれませんね。

Antiques amour violet 店主